

『エンドゲーム』
作:サミュエル・ベケット
訳:岡室美奈子 『新訳ベケット戯曲全集1』2018年刊行(白水社)
演出:河井朗
2024年7月19日(金)〜7月27日(土)
会場:アトリエ春風舎












上演にあたって
1906年にアイルランドのダブリンで生まれたサミュエルベケットは、第二次世界大戦を経験しました。翻訳者の岡室氏による言葉を借りると、ベケットにとって「不条理は難解な思想などではなく(中略)きわめてリアルな世界の見え方」とのことです。
この戯曲の舞台である部屋はシェルターだという説があります。核戦争の後の世界で終わりを待つ家族らしき四人。日の光の差さない灰色の世界は、終焉に向かう世界の終盤にあると思えます。
しかし、登場人物4人の関係性、主にハムとクロヴの二人の会話は、もっと身近なものを想起させました。それは世界の至る所で今まさに起こっていることと変わらないのだと私には思えてならないのです。
例えば、仲の睦まじくない親と子。
例えば、争いの絶えない兄弟。
例えば、認知症の祖父を取り囲む家族。
例えば、誰も望まないのに起きる戦争。
とか。
不条理とは社会の道理にそぐわないこと。それはそのまま私たちの日常を指します。
あなたの日常生活にある不条理と向き合った時、この物語をどんな風に受け止めることができるでしょうか。
おしまい。
終わりました。終わりそうです。
もうすぐ終わるはずなんです。
小さな窓が二つだけあるほか何もない部屋で、ヨタヨタと不自由にその間を行き来する男。
血のついた小さなハンカチを顔にかけキャスター付きの椅子から動けなくなった男。
ドラム缶の中で余生を送る老夫婦。
今日も彼らの生活は終わりに向けて始まります。
生きることにも死ぬことにも前向きでない彼らのよく回る口が何を語り出すのか。
1957年に書かれた『ゴドーを待ちながら』に続く、ベケット第二作目の戯曲をルサンチカがいま上演します。
孤独と絶望に満ちた狭い部屋で暮らす四人の物語。
間も無く、世界の終焉が参ります。
出演者

川本三吉
Kawamoto Sankichi
JAPANWing所属。1975年2月5日生まれ 広島県の尾道市生まれ。
映画好き。映画に出演したい為23歳の時何となく大阪の野外劇団「犯罪友の会」に入団 。
映画も何本か出させてもらったので夢は叶った。最近東京に移住。Uber eatsをやりながら23区冒険中。今年中に電動自転車が欲しい病弱。
主な出演作に磯部鉄平監督作品『凪の憂鬱』('23)、森達也監督作品『福田村事件』('23)、サニーデイ・サービス『ロンリー・プラネットフォーエバー』(MV)、台風クラブ『下宿屋ゆうれい』(MV)など。

伊藤拓
Ito
Taku
1993年生まれ。埼玉生まれ埼玉育ち
青年団所属。ムニタイトルメンバー。
チープでキッチュをモットーに俳優を中心に演劇に関わる。
タイミングが合わず2年かけて念願のルサンチカ初参加。
青年団では『ソウル市民』に出演。ムニのタイトルメンバーとして多くの作品に関わり、最近では喜界島サンゴ礁化学研究所の演劇プロジェクトに参加。
「既成戯曲の作品には正直機会がなくあまり参加したことはありません。経験はないけど不安よりも、新しい体験ができるという好奇心の方が強いので上演が楽しみです。」
趣味はMLB観戦、商店街さんぽ、演劇フライヤー集め、スロット 。

瀧腰教寛
Takigoshi Takahiro
俳優。1985年2月23日生まれ。石川県七尾市出身。
音楽全般が大好き。好きな食べ物は卵料理。肉。
2007年から2018年まで〈重力/Note〉に参加。『かもめ(原作:アントン・チェーホフ)』『マリア/首(原作:田中千禾夫)』『雲。家。(作:エルフリーデ・イェリネク)』等に出演。
近年は俳優として、新聞家『失恋』『フードコート』、スペースノットブランク『言葉だけでは満ちたりぬ舞台』『フィジカル・カタルシス』『すべては原子で満満ちている』『ウエア(原作:池田亮)』『氷と冬』『セイ(原作:池田亮)』、武本拓也『庭の話』、BEBERICA theatre companyあかちゃんとおとなのための舞台芸術・ベイビーシアター『What is Like?』、屋根裏ハイツ『ここは出口ではない』山本伊等『配置された落下』等の作品に参加。
Photo:NishiJunnosuke
サミュエル・ベケット
Samuel Beckett(1906-1989)
アイルランド出身の劇作家・小説家。1927年、ダブリンのトリニティ・カレッジを首席で卒業。28年にパリ高等師範学校に英語講師として赴任し、ジェイムズ・ジョイスと知り合う。ダブリンやロンドンでの生活を経て、37年の終わりにパリに正式に移住し、マルセル・デュシャンと出会う。ナチス占領下には、英国特殊作戦執行部の一員としてレジスタンス運動に参加。『モロイ』『マロウンは死ぬ』『名づけえぬもの』の小説三部作を手がけるかたわら、52年には『ゴドーを待ちながら』を刊行(53年に初演)。ヌーヴォー・ロマンの先駆者、アンチ・テアトルの旗手として活躍し、69年にノーベル文学賞を受賞。ポストモダンな孤独とブラックユーモアを追究しつづけ、70年代にはポール・オースターとも交流。晩年まで、ミニマル・ミュージックさながらの書法で、ラジオ・テレビドラマなど数多く執筆。
岡室美奈子(おかむろ・みなこ)
早稲田大学文学学術院教授、文学博士(ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)。ベケットを中心に、現代演劇論とテレビドラマ論を専門とする。共編著に『ベケット大全』(白水社)、『サミュエル・ベケット!――これからの批評』『ベケットを見る八つの方法――批評のボーダレス』『六〇年代演劇再考』(ともに水声社)、『日本戯曲大事典』(白水社)、Samuel Beckett Today/ Aujourd'hui 19: Borderless Beckett/ Beckett sans frontiers, (Amsterdam: Rodopi)など。上演記録
2024年7月19日(金)〜7月27日(土)
会場:アトリエ春風舎
演出:河井朗
ドラマトゥルク:蒼乃まを
出演:川本三吉、伊藤拓、瀧腰教寛、赤刎千久子
音響・照明:櫻内憧海
記録:manami tanaka
企画・主催・製作:ルサンチカ
協力:お布団、青年団、ホエイ、JAPANWing株式会社
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成】
【掲載情報・関連企画】
・2024年7月19日
ルサンチカ「エンドゲーム」開幕、河井朗「登場人物たちのギャップ(溝)を味わって」
・2024年10月30日
TH叢書100号「いとしの人でなし〜影に潜むシミュラークルたち」劇評掲載
Mail|ressenchka@gmail.com
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